T−POPレポート、夏の新作シリーズ、です!

#11 拝啓 Silly Fools さま

昨晩のLiveの耳鳴りがまだ消えない……
もっと大きなハコだった ラチャダーのDance feverのときさえそう思いましたが。
とにかくタイ人観客の歌声がうるさい。
みんな、声を「張り上げて」何百人も歌うもんだから
(怒鳴って歌ってるみたいな) 鼓膜にビリビリ響いてきます。
タイ人がいかに歌好きかと言っても……もう少しやさしくお願いします。
Voトーの声を聞きたいので。

Silly Foolsは名実共に、現在のタイrock最高峰のBand
ボクが彼らを最初に聞いたのは、
エンポリのCD屋で店員に勧められて聞いたのが始まりで、
とにかく演奏の質が高いことにびっくり。
音の質感ですぐ思い出したのがLiving Colour(ミックスチャーの黎明期の雄)。
しかし、一般的に彼らの音楽を評する場合には
オルタナやハードコアなる括り、
バンド名ならリンキンパークやリンプビズキットなどが挙がります。
KING SIZE(2004年1月発売)
シリーは今年始めに待望の6th Album、 KING SIZEを発表し、ヒットも飛ばしましたが、
同アルバムの評判は可もなく不可もなく、といったところ。
シリーについてボクはなかなか書くきっかけがありませんでしたが
もう2度もLIVEを見たし、CDも全作聞いたし、そろそろ腰を上げるべきかと。

ボクのsilly評はずばり(バンドとしてのスケールに比較しての)「楽曲の弱さ」。
単純に良い歌が無いように想うんですね、シリーは。
たとえばロックの王道とも言うべき「リフの歌」が異様に少ないのも彼らの特徴。
ボクは同じ事務所(モアMUSIC)の仲間である
LoSo(との差別化)を かなり意識しているように思っています。
いわく俺達はLoSoとは違うんだ、と。
リフをやってしまうとLoSoと同じになる、と。
しかし、リフの優位性はロックではもはや定説。
レッドツェッペリンの名を挙げるほどまでもなく、ロックの歴史はリフの歴史でもあります。
ボクはシリーのリフSONGが聞きたいんですよね、まず。
彼等がやればLoSoと同じにならないのは明白なんですけどね……
そして、楽曲。別の言い方をすればステージの曲構成、
これにも多いに不満。

先に書いてしまいますが、
ボクは彼らにアサニーワサンの♪タンタンティルーをliveでやって欲しいと想ってます。
いや、やるべきだと想ってます。
(Voのトーがアサニーのトリビュートアルバムで既にCover済)
つまり彼らには、ぜひ「歌」を意識して欲しいということ。
誰もが口ずさめる……なんてことは言いませんが、
今のシリーの歌は、彼らのBand soundでこそ再現可能なもので、
メロディだけを浮かばせれば、それは決して頭に残る種類のモノではありません。
その証拠にカラオケ(のアチャラケなオケ)でシリーを歌っても
思いのほか雰囲気が出なく、興ざめしたりする。
アマチュアバンドがpubでカバーしてもピンと来ない。
だってシリーの曲は シリーのアレンジでないと成立できない(かっこよくない)楽曲ばかり
(タイ人はそんなことお構い無しですけどね)

別の角度から言えば それだけ彼らの楽曲の質は高い再現が難しい)ってことですね。
しかし「歌」としては、思いのほか、頭に残らない。
Sillyがリンキンのcoverをステージでやるのは“絶対に”格好悪いですよ。
ロックとしてカッコ悪い。
そうでなく、タンタンティルーをevery breath you take(by police)風に、
淡々と 、しかし楽しく演ることで シリーのかっこよさが見えてくる。
そう想ってるんですね。

KING SIZE発表後、Sillyは大きな会場ではなく、
バンコクを中心としたpubサイズでのliveをひたすら繰り返しています。
それはもう殆どpackageともいえるshowの繰り返しで、
果たしてそれが彼らのBandとしてのProgressにどれだけ繋がって行くのか、
少々問いただしてみたくもなります。
もともと客いじりのヘタクソなBandだけれど、
もはや彼等は タイのNo.1バンドになってしまったのですから、
そのへん、ステージの組み立てという点でも、考慮が少し必要かと想っています。
メンバーの体重増加も気になりますが、 それ以上にシリーの変革は楽曲から。
是非彼らには歌える「歌」を作って欲しい、そう想ってます。
そしてそれは、
たとえばタンタンティルーなどをstageで歌うことから気づくようになるんじゃないか、
そんなふうに僭越ながら想うわけです。

ボクはシリーにはもっと伸びてもらいたいし、伸びなければならないBANDだと想ってます。
Silly、よろしくね。

このギターのmaker、だれかご存知?at Gimmik 15/July/2004

(16/July/2004 記)





#12 歴史的な日の夜に奇跡のLiveを観た! 大御所イッティの復活

今日はついにやってきた地下鉄開通日、
ワンティーサーム・カラッカダーコム(7月3日)。
夜、お誘いを受け、エカマイのPub*バーン・ゲップタワンへ向かう。
*日の沈む家、という意味で今夜の主役、イッティの代表曲だそうです。
 朝日の当たる家なんて歌は聞いたことありますけどね。)

お店は隣のハイソなトンローとは対照的なカントリーチックなつくり。
ラチャダーのポークンパオを小さくした感じ。
地方にはコノテの雰囲気のお店は多く、 プアチウィットなんかがしっくり来そうです。

今夜のメイン、ITTI(イッティ)は80年代後半から活躍する
いわばT-POP黎明期のアーティスト。 あとで最新CDを聞いて分かったのですが、
音の肌触りは再結成に沸くマイコー(MICRO)やヌーボー(NUVO)のRock派よりも
country/folk寄りのアサニーワサンに近い感じ。
長渕のカバーなどもやってるらしく、
ちょいと芯の入ったアーティストとも言えるようです。

ITTIは何度も癌に侵され、今夜のLiveも本当に出てくるのか、
と心配されていましたが、 長ーい前座ハコバンの演奏が終了した深夜1時に登場。
長かった〜 (しかしこの長い時間のクリアが
 T-POP鑑賞には必須項目であったりもします。

ITTIはやはり長時間の歌唱は難しいのか、
椅子に座って、何曲かはメインVoをバックのbassistに譲りながらのLiveとなりました。

ボクにとってはまったく初体験のITTI。
セミフォローボディのテレキャスを弾く姿は流石に年期が入ってて、キマってました。
かぶり付きでcheckしてると、
要所要所のguitarはバックに譲ることなく自らプレイ
テレキャスの音作りもナチュラルで二重丸。
それに対してスティーヴ・ヴァイかジラサック?ばりの
アイバニーズlocking typeを弾くバックギタリストには閉口。
深めでアタック感のないディストーション(歪み)や、派手なライトハンド奏法、無味乾燥な速弾き……
(タイに一番多いtypeのギタリストとはいえ)
全てITTIの音楽性に似つかわしくない、センスゼロのバッキング。
この辺はプロデューサーの必要性を強く感じてしまいます、T-POP。
この場合は指引きなどを多用したアタック感のある、カントリーフレーバーなplayが理想でしょう。
そういうのを、supportっていうんだよなあ……

ベーシストもシンプルな指弾きプレイだったんですが、
ルート以外の音を出すときのハネた感じがどうも気になってて。
そういえば何故か最後の曲がナックの♪マイシャローナだったんですけど、
このときのベースはぴったりハマってて、
つまり普段はそういう音を出してるバンドなんでしょうね。
そう思うとITTIにはもっといいsupport bandをつけてあげたい。
もしくはシンプルな弾き語りスタイルが良いかもしれない。
彼本来の素朴な魅力を引き出せそうです。

ITTIの声はとても味があって、上手くは無いんだけど染みて来るような良さがあります。
曲は……毎度の循環コードです(苦笑
古巣RSから出たITTIの新譜、VCDも発売中!
ライブ終了後にCD即売会があって、値段も良心的だったので
迷わず買って、本人にサインしてもらいました。
こんなミーハーな経験も生まれて初めて。

終了深夜2時。
バンコクの地下鉄開通日の今夜はたくさんのライブが各所で行われたようですが、
ささやかなこのエカマイでのliveも、中々イケてる時間ではなかったかと想います。

そろそろプアチウィットも書かなきゃいけないかなあ、と考えたり。
じゃマリワナ、もう1回見に行こうか……。

追記:2004年11月11日、イッティは多くの人々の願いも空しく、鬼籍に入られました。
つつしんでご冥福をお祈り申し上げます。


-----------特別寄稿---------------
タイ在住のPポン様よりイッティについて、
「タイで想う日々さんへの雑談」ということで下記のようなコメントを頂きました。
大変感銘を受けましたのでここに転載させていただきます。


15年ほど前、バンコクで音楽テープを売ってた時期がありました。
当時仕入れ値はタイ人アーティストの正規物で30〜35バーツ程度、
それを50〜55バーツで売りました。(ちなみに現在は80〜100B/250円)。
まだビデオの普及が始まる直前で、やっとラジカセを買える余裕がある、
生活に届いた、という層が多く、音楽テープの需要は最高潮でした。
ちょうどナサ、パレスといったディスコが全盛の頃です。

1番売れるのはやはり新作ですが、ラジカセ買って間もない人は旧作も求めるため、
かなり昔のアーティストまでラインナップを揃えてました。
総売上ではバード、クリスティーナあたりでしょうが、イッティは末永く、
ほとんど全員が買っていた印象があります。
イッティに匹敵するタイプはポンパットで、彼も多くの若者に受け入れられてました。

当時の流行語というか、よく使われる言葉として、この二人のヒット曲がありました。
ポンパットは『トアサムロン』という曲で、フラれたり、捨てられた奴が、
周りのみんなに(例えて)ハモられてました。
そしてイッティの『ハーイ・マー・レウレウ・パイ』、
こちらの方が使用頻度が高く、たとえば、
約束の時間に遅れた時、スコールに遭うなどタイミングが悪かった時、
具体的に言えば、開店準備中にテープを買おうとする客には
『♪マー・レウレウ・パイー(早く来過ぎちゃったね〜)』などと(歌詞を)アレンジして歌われてました。

声に出して歌う人はいないでしょうが、今回のイッティのこと、
『♪ターイ・レウレウ・パーイ(早く逝き過ぎちゃった)』と
心の中で彼の大ヒット曲を思い出してる人はいるんじゃないでしょうか。

本当にレウレウパイだよ、ピー・イッティ(イッティ兄さん)。
御冥福をお祈りいたします。


----Pポン様、ありがとうございました(タイで想う日々・管理人)------




#13 閑話休題 ボクがタイの音楽に魅せられたワケ



いつの間にか少なからずの人にこのReportを読んで頂ける様になって、
「語るべき音がそこにあれば」なんて、 ちょっと音楽評論家きどりを自省してみたり、
特定アーティストの事では「あまり敵を作りたくないな」と書き方に配慮してみたり(苦笑。
無論、好みとか趣味のレベルで語らないよう気はつけていますが。

でもボクがこんなレポートをweb上で発表したいと想ったのは、
タイって何処にでも音楽が溢れてて、
純粋に「音を楽しむ」という(いまや日本人が忘れてしまった?)
根っこの部分をタイの人たちが持っている、
そういうことに感激して書き始めたこと
なんですね。
だから、一度、T-POPレポートなんてお題目を外して、
単純にボクがタイの音楽に惹かれたワケ、というのを一度書いておくべきかな、
そう想いこの文を仕上げることにしました。
これを書くことで、ボクのレポートも違った視点で読んでいただけるのでは、
そういう願いも込めて。

ボクが最初にタイの「生の」音楽に触れたのは2000年の秋でした。
ガイド誌「歩くバンコク」の「日曜は誰でも参加のジャムセッションあり」という一文に惹かれて、
トンローにあるウィッチーズタバーンというpubに行ったことが始まりでした。
結局、セッションには出会えなかったのですが、そこに出ているバンドもなかなか楽しかったし、
特別Liveチャージを取られるわけでもないし、
すごく気楽にハコバンの生演奏を楽しむことができたんですね。
日本なら友達のバンドを(義理で)見に行くだけでも数千円掛かったりしますからね(苦笑。
何よりその気軽さがとても魅力に想いました。

年が明けて2001年、場所はアユタヤ。
バスを降りてすぐ捕まったガイドに
「(セリエA)中田のサッカー中継が見たい」と 案内してもらったPub。
CCRなんかをちょっとしょぼい音で鳴らしてたBANDにひょんなことで加わったんですね。
店長がガイドの知り合いで、
「ボクguitar弾くの好きなんだ」「じゃやってみるか?」「いいの?」「いいさ」
そんな感じ。
曲は確か、♪プラウドメアリーやって、♪stand by meでは歌もやりましたね。
とにかく、それがやたら楽しかったんです。
乾季のタイはオープンタイプのレストランも多く、すごく開放感があって気持ちが良い。
日本なら騒音問題で隣から苦情が来るでしょう。
つまり、敷居が低いんですね、タイのお店は。
誰でも快く受け入れてくれる 。
(とはいっても舞台に上がるまでの綿密な状況作りは必要ですよ、これは企業秘密・笑)

ボクは26歳で初めてBANDを始めたという変り種ですが、
ギター自体は兄貴の影響で中学時代からいじってました(ちなみにBANDではBass&Vo.を担当。
また、音楽活動を休止する最後の2年ほど、
100人近い人たちとセッションを繰り返したこともいい経験になりました。
人と音を合わせる楽しさ、それこそが音楽だと。
ボクはこれで世界中の人と“会話”できると。
余談ですがタイには路上ミュージシャンというのを殆ど見かけません。
数年前「電波少年」の企画でアジアンHというバンドが タイで路上を試みましたが、
警察にたしなめられていました。
ボクはとある取材で広島に行ったとき、大きな繁華街で路上のシンガーたちに混ぜてもらい、
GuitarをPlayしたことがあります。
人前でPlayするのは本当に久し振りでしたが、そのときに
「音楽って楽しめばいいんだ。それが人に伝わるんだ」
そう感じたんですね。
そのとき想った気持ちを、タイはボクに呼び起こさせてくれたんだと想います……。



そんな形で“タイデビュー”を飾ったボクは、その後、訪タイするたびに pub、Liveレストランめぐり。
結果、舞台に立ったタイの町を挙げると、
北はチェンマイ、ターク、アユタヤ、南はホアヒン、チュンポン、プーケット、ハジャイ。
一番多いのはやはりバンコクで、
The Rock Pubでやった♪天国の扉、とか。
先のウィッチーズタバーンでの♪コカインとかの名演も生まれました。
(自分で名演って言ってりゃ世話ないですけど。まあ筆の勢いです、勢い・苦笑)
実は各所で色んなエピソードがあるんですが(カオラックget away here事件とか)
キリが無いので止めます。
プーケット(タウン)は街が小さいから殆どのPubを制覇、していまいました。
もっとも最近は場の空気が“確実に”読めるようになってきましたので、
舞台に立つ回数は減ってきてます。
もっと気軽に楽しむようになってきたからでしょうか。
結構、気合い要りますからね、舞台上がるの。
っていうか、そんなに舞台上がってどうする? って感じでしょうか(苦笑)

タイの人は音楽が大好きです。
どんなに最先端のLiveでも最後にモーラムが掛かったりすると
ワイルン(若者)も 一緒に踊ったりします。
それがたまらなく羨ましかったりもします。

気取りがないんですよ、音楽に対して、タイの人は

音を楽しむ、歌を楽しむ。
日本はもう既に音楽が(特にPop Musicにおいて)細分化されてしまって、
やれRockだ、ハードコアだ、J-POPだ、R&Bだ、テクノだ、Hip-Hopだって……
現実的に音楽の話を共有するのが難しくなっています。
(Pop Musicはひとつです、って! No Border !)

演歌や歌謡の衰退も大きいでしょうね。
ボクの子供時代には歴然とした日本歌謡曲がありました。素敵なメロディーがたくさんありました。
なんだかタイに居ると、そんな、あの
日本の素直な音楽の時代がまだ残っているような気がするんですね。

基本的に音楽を測る尺度に、 洗練されている、という表現はあっても、
コレは進んでいるとか、コレは遅れているという表現は相応しくないと想います。

普遍的なものは、いつまでも人に愛され、生き残ってますよね。
いや普遍的なものを生み出すことこそMusicianの使命だし、本望じゃないのでしょうか。

というわけで、かくのごとく、 ボクとタイ音楽の出会いというのは、
頭で考えたり、本で読んできたモノではなくて、
もっと実感として、肌で感じてきたモノなんですね。
タイに居れば十分音楽を、身近に肌で感じることができる、 それがたまらなく大好きなんですね。
最新ヒットチャートなど、実はあまり興味はありません
(まあ便宜的にやらないとT-POPを語れないので)。

だから、そうですね、ボクはすごく身の回りで感じるタイMUSICの良さ、
これからも出会うであろう面白く、音楽的に豊かなT-POPをこれからも現場で探して行きたい、
そんなふうに想っているんです。

だからこれからもボクはT-POPを追いかけていきます。

(1/Sep/2004 記)




#14 カラバオだけがプアチウィットじゃない! その名はマリワナ タイのWorld Musicがそこに!

タイのポップMusicにおいて重要な歌のジャンルがあります。
それは、プレーン・プアチウィット。生きるための歌

受け売りを少し。
1970年代初頭のタイは変革の時代、
軍部内の権力闘争の一方、民衆の間には民主化闘争の運動も生まれてきた。
芸術や文化などで既成概念に捕われない自由な発想を謳い、
73年10月の学生革命などを通じて生まれたその運動は、生きる為の芸術運動(ART FOR LIFE)と呼ばれ、
その中で生まれた歌をプレーン・プアチウィットと呼ぶようになった、
そうです。
イメージ的には日本の学生運動から生まれてきた社会派フォークソング、
岡林信康や高田渡、全日本フォークジャンボリー……そんなキーワードが思いつきますが、
実際にも日本のミュージシャンとの交流もあるようで、確かに聴いてみると、
音的な肌触りもあの時期の日本のフォーク・ロックに通じるものがあるかと。
いわばそこにタイのソウル、ブルースがある、と。

プアチウィットのメインストリームは、
(先日来日した)カラワン(・スラチャイ)からカラバオ
そしてポンシット・カンピーと受け継がれてきました。
タイの地方へ行くと中心なのがこのプアチウィット、
だから「聴いたことが無い」と想っている人でも意外に耳にしている音楽かと。
ボクも音のイメージは既にありましたが、
実はトップクラスのバンドのLIVEは体験したことが無かったのです……

そんな5月のある日、情報を聞き、ラチャダーのポオクンパオへ。
ここはカラバオなどもliveを行う、BKKでも屈指の「プアチウィット」の主戦場。
ステージに登場したのは、マリワナと呼ばれるバンド。
バンド名からして来日できません、と公表しているようなバンド(苦笑。
ステージ上には総勢7名のmusician。
Dr、B、EG、AG、Key、Per、
これにラナート(タイ木琴)、縦笛、アコーディオン、ブルースハープなどをこなすplayerが一人、
(このひとが、音に“彩り”を加えるアクセントとして効いてました)。
演奏が始まって、少し遅れてメインヴォーカリストが“一人だけ”登場。
同行者に聞くと、マリワナはもともとツインVoスタイルで、
もう一人のVoは、切々と歌う今のVoとは対照的なタイプのsingerだそうで、
そのコントラストもマリワナの魅力だった、とのこと……
(何故か、過去形。理由はのちほど。)

Voの声が会場全体に響きわたる。
突き抜けるような声量、圧倒的な存在感
彼は口先で歌うのではなく、身体全体でそれを表現しようとしている。
全身全霊の歌唱法。
彼の中には(彼だけの)音楽観、リズムや響き、が全て詰まっている。
そしてそれがまるでオーケストラの指揮者のごとくBANDのビートをグイグイ引っ張っていく。
ちょっと凄いな、この人……

カーウット・トンタイsolo Album

カーウット・トンタイ、現在、マリワナ“名義”バンドの中心人物。
名義、というのは(情報は後で教えてもらったのですが)、
マリワナは昨年(2003年)メンバーの仲違いで既に解散しているらしく、
本来はマリワナとは名乗って良いのかどうか、という状況。
(なんかそういうバンドのトラブル、良くありますよね、世界中で)
だから、第三者的に冷静に判断すると、この日の、
いや現在の“マリワナ”は、元マリワナのカーウット・トンタイのソロ・プロジェクト
とみるのが妥当なようです。

ボクが所有しているマリワナの音源(カセット)は1stから4thまで。
初期は「これぞプアチウィット」的な素朴なフォークテイストなのですが、
3rdあたりからrhythmや音色にも変化が。
特に4th albumは充実度が増して名曲揃い! 
Rockテイストに加え、多様な楽器を使用することで、
さながらworld Music的な装いも身に着けています。
個人的に嬉しかったのは、
ボクがphuketで良く行ってたcowboyっていう大型pubで聴いた曲が何曲かありまして、
で、そこのBand Memberとは良く話したのですが、
想うにこのマリワナ、タイの市場のmusicianたちからの支持が高いBANDではなかろうか、と。
もしかしたらmusician's musicianとしてはカラバオより人気あるかも……あくまでも直感ですが。
マリワナ 4th Album プゥアン・ペー(2000年発表) 名作!

「カーウット・トンタイBAND」はそのマリワナの楽曲を中心に、時々ハードでリズミカルな曲もやりますが、
その殆どがミディアムテンポのナンバー。
同じ調子の曲が延々と続きますが、不思議と飽きないんです、コレが
冷静に見ると(たとえば日本の女の子とかがフツーに見ると)
「若いときの大川栄作」みたいな感じなんでしょうけど(苦笑。

おそらく彼らなら3時間程度のコンサートなら楽々とこなしてしまうでしょう。
タイのグレイトフル・デッド、ってとこでしょうか。
いや、そんなテイストありますよ、このプアチウィット。
(デッドって、日本などでは認知少ないですが本国アメリカではLiveでNo.1の人気を誇ってたそうですから)。
ベースの弦が4本であったことも気に入りました。
(カラバオが起源と推察されますが)5弦なんか必要ないよ、タイの音楽に(苦笑。
在りし日のマリワナ、中央がカーウット・トンタイ
終演は午前2時、(途中ケンカ騒ぎもあって一時騒然としましたが)
ボクにとって(今のところ)タイでBESTのlive performanceを演じてくれた“マリワナ”。
これからも注目ですね。
数年後には何事も無かったように“正式な”再結成するのでは? 
タイなんだし。その辺は適当によろしくお願いします。

カラバオが既に一音楽家の域を超えたBANDになってしまった現在、
(カラバオデーンはタイのオロナミンCみたいなもの? そうするとカラバオは読売巨人軍ですか・苦笑?)
カラバオだけがプアチウィットじゃない!
真のプアチウィットがそこにある!? 
かどうかは個人のご判断にお任せするとして、
カーウット・トンタイのヴォーカルは一聴の価値があると、ここに推奨申し上げます。

でも正直な話、プアチウィットはBKKで聴くよりも地方がしっくりくるんですよね。
タイの田舎へ行って、町外れのオープンレストランでのんびり飯を食いながら、
チビチビ呑みながら。
社会主義な写真に囲まれながら……(苦笑。

(13/SEP/2004記)

これにてT-POPレポート、夏の新作シリーズ、終了。次の機会をお楽しみに!

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