T-POPリポート、
再開記念の最初にお送りするのは
タイの洋楽cover albumのお話です。
2003年の暮れに、その名もGuitar manなるタイトルの
アルバムが、タイ音楽界最大手のグラミー社から発売されました。
これはタイのROCKアーティスト、どちらかと言えば
表ではなく裏方のスタジオミュージャンが何人か集まって
アトランダムに制作したモノのようで、
恐らくタイのギターキッズたちには
垂涎のアルバムだったのように推測されます。
(もっとも良く行く楽器屋の兄ちゃんは知りませんでしたけど……)
Guitarman(カセットJACKET)
その
選曲内容は(タイ人が選んだにしては?)ちょいと味のあるもので、
Queenのメドレーから始まって、
Steery dan, Billy joel, the Beatles, Santana, Dire straitsなど
主に70年代から80年代のロックで構成されてました。
先日ブライアンフェリーとBKKでジョイントコンサートを
行ったpretendersの
♪don't get me wrongなんてのも入ってましたね。
で、このalbumの出来なんですが、
なかなか良いんですよ。
アレンジは殆ど原曲に沿ったモノなんですが、
変に力み過ぎても居ないし、とても素直に原曲の良さを引き出している。
演奏もタイト、引き締まってます。
英語の発音も(少なくとも日本人よりは)良いし、
これを聞く限りタイのミュージシャンの演奏力は
決して他国に見劣りするものではないと感じさせました。
今でもどんなメンツで作られたのか情報が少ないんですが*、
たったひとつ、確認したこと。
2003-04年のPHUKETカウントダウンコンサートが
iTVでOn Airされたんですが、
これを見てたら、
Queenの♪We will rock youを演奏しているオジサンバンドが居まして。
どこかで聞いたような歌声……
そう、間違いなくこのギターマン参加の*Guitaristでしたね。
テレキャスター弾いてました。
歳は恐らく40代でしょう、まさしくあの時代のROCKを聞いてた世代。
彼のSoloコーナーになると画面はCMに変わりました(苦笑。
*スラシーというベテランシンガー/ギタリストだそうです
思うにタイの重鎮Rock artistであるアサニーワサンなんかに
こんな洋楽カバーアルバム出してもらえたら
いまあるT-POPの音楽的背景が分かって面白いと思うんですよね。
でもカバーは怖いですよ、その人のキャパシティ全部分かっちゃいますから。
洋楽cover albumで言えば、
その後入手したWe love carpentersっていう
同じくグラミーの女性シンガー5人によるカーペンターズのCover集があるんですが(発売は2002年)。
思うに、
この洋楽Rockカバー集のさきがけになった存在かもしれないんですよね。
で、このWe love...の中身なんですが、
残念ながらguirar manのように引っ掛かってこないんですね。
ただ流れていく。
相手が悪かったですね。何たってカレン・カーペンターですから。
あの天性の声に真正面から勝負しても適いません。
アレンジもひと工夫、欲しかった。
カーペンターズのライター陣は、
全米No.1になった♪(they long to be)close to youのバカラックを始め、
PウイリアムスやRニコルスなど超一流の人たちですから、
それらの楽曲を"まんま"アレンジだと、誰だってカレンのVoと比べてしまいます。
これはシンガーというより、
制作サイドの問題でしょう。
そう、タイの音楽界は 女性シンガーの“生かし方”、“Produce”において
アイドルは育てられても、アーティストを育てる領域に達していないのでは?
常々、個人的に想像していることです。
いずれにせよ、カバーって言うのは諸刃の剣でもありますが、
好きなアーティストが歌ってるそのオリジナルを聞いて、
新しい音楽に出会う、
そのアーティストの原点を知ることで、より大きな音楽的な感動にもたどり着く……
そんな<音楽連鎖の体験>ができるわけで。
そんな土壌がその国の音楽的成熟度を高めていくと思うのです。
まあ、小難しいことはさておき、
どうです、Rock好きな方、T-POPの入り口に、一度Guitar man 聞いてみませんか?
(ちなみにSteely danで取り上げられたのは デビュー曲♪do it again
これ選んだだけでもなかなかのセンスですよ、T-POP)
<追記>*最初に購入したのがカセットで詳しい情報が分かりませんでしたが、
その後CDを購入、以下がそのINDEXです。
ジョー&コン、マーシャ、メーオジラサックなど著名なアーティストも参加しています。
track No. | song | singer/player | original artist |
---|---|---|---|
M-1 | MEDLEY QUEEN | Surasee Ithikul | Queen |
M-2 | Do it Again | Rong(Ster) | Steely Dan |
M-3 | You May be Right | Jack Fly&Justin | Billy Joel |
M-4 | While My Guitar Gently Weeps | Joe&Kong | the Beatles |
M-5 | The Game of Love | marsha | Santana |
M-6 | Money for Nothing | Jack Fly & Justin | Dire straits |
M-7 | Still Got the Blues | Surasee Ithikul | Gary Moore |
M-8 | Don't Get Me Wrong | Rossukon | the Pritenders |
M-9 | Easy | Nuntapong Tossaporn | Lionel Richie |
M-10 | I'll be over You | Meaw Jirasak | TOTO |
HPの更新作業をしながら、
日本から持ってきたBJトーマスのBESTを聴きました。
久しぶりに聞くアメリカンポップス。
さすがPOP Musicの源、「懐深いなあ」と唸ってしまいました。
名曲「雨にぬれても」のラストは
バカラック独特のブラス(管楽器)セクションでのフェイド・アウト。
こんなエンディングだとはすっかり忘れてました。
洒落てますね。
硬い言い方ですが、「音楽的高揚」がそこにあるように思います。
それがあるからこそ、ボクはPOP Musicをずっと聞き続けてこられたとも。
そこで、常々ウンザリしてるお話。
それは、なぜT-POPって、A-B-Cなの? ってことです。
曲の構成ですね。
特にBメロ部分で、引っ張って引っ張って、
ブレイクがあって、
さあ来たぞ、Cの大サビ!(辛そうだぁ!) みたいなのがかなり恥ずかしいです。
T-POPはメロディを乗せやすい、いわゆる循環コード進行が殆どなので、
簡単に言えば、そのコードをGuitarでも弾きながら、
鼻歌で歌えば1曲出来上がり(極論ですよ、あくまでも)
そんなタイプが非常に多いように思います。
特にイケメン新人バンドのバラードにその傾向が強いと思います。
これでは、T-POPはつくりが安直、と言われても仕方がないのでは?
循環コードが悪いとは言ってません。
コード進行を超えるメロディを生み出そう! ということです。
(Taxiの大ヒット曲♪Khid Thung Chan Mai Wee-laa Thii Ther...は好例)
そして、曲の構成なら、ガツンと印象的なフレーズを頭に持ってきてもいい。
タイロックの重鎮アサニーワサンのトリビュートアルバムで、
Silly fools(のtoe)がカバーしてる♪タンタンティ・ルー。
サビのフレーズを頭に持ってきて印象的な仕上がり。
これはアサニーの原曲にはない構成。
LoSoの歌の中にも
♪タオスラナリというナコンラチャシマの伝説の英雄を称えた歌がありますが、
これも「タオスラナリ」というメインフレーズを冒頭に持ってきて、
とても壮言な仕上がりになっています。
(英雄をたたえる、という内容に相応しい)
Palmyの代表曲♪大声で歌いたい、もサビのメロを旨く利用した構成です。
構成力もPOPミュージックでは大切な要素です。
(日本などではDメロと呼ばれる、
間奏後のサビに繋げる一度きりしか出てこない、別メロディが好まれたりします。
曲の印象をワンフレーズで覚えさせることができれば
日本人ばかりでなく、どこの国の人にも訴求していく力が持てると思います。
言葉が分からなくても伝わる、それが音楽の良さなのですから。
たとえば「イントロ無し」のT-POP、なんてのも聴いてみたいですね。
ベードラだけのbe my baby(Fスペクター&ロネッツ)スタイルもイイですよね。
そんな曲ならいまのT-POP市場なら相当新鮮な捉え方をされると思います。
T-POPの変革は曲構成から!
よろしくお願いします、グラミーさん。
5月15日に発売されたトンチャイBird&SEK LoSoの新曲、
♪オンプラマープット、聞いてます。
重厚なSEK(セーク)のギターがアルペジオを刻む
マイナーロッカバラード、良いです。
セークの歌唱指導が効いたのか、 トンチャイ 、堂々とした歌い上げ。
セークも歌ってますが、何処で変わったか分からないくらい
二人の声質は良く似てます。
(LoSoの代表曲ソムサーン、チャイサンマーもトンチャイの歌声で新録音! 必聴!)
しかし、相変わらずトンチャイは何を歌ってもトンチャイ、
その歌唱表現力は見事というばかりです。
トンチャイの声はホント、スッと抜けていく気持ち良さがあるんですよね。
さて、ボクにとってはオンタイムで聴く初めてのセークの新曲、
シンプルながらも、聞かせどころがあるメロで
大いに満足してます。
セークはタイを代表するGuitaristでもありますが、
なにより彼は優れたVocalistでもあります。
経験上言わせていただきますと、
歌えるGuitaristってのはギタープレイでも聞かせどころを知っています。
タイ人に多い、
Heavy Metalベースの弾きまくり系ギタリストではない、
日本的に言えば「歌ごころのある」ギタリスト、シンガーだと思います。
LoSo (ローソー)は1996年にデビュー。
(そういえば3人組ってのも今でもタイでは珍しいですね)。
おそらく最初はオルタナティブロックグループなんて触れ込みで
紹介されることも多かったでしょう。
デビュー作Lo Societyで聴ける、倍音の多めの加工系ディストーションサウンドは
ズバリ、ニルヴァーナ。
それがだんだんマーシャルamp直つっこみ的なワイルドさに
変わっていったのが興味深いです。
借り物じゃない、自分たちの音に目覚めて行ったのだと思うのです。
(ギターキッズ諸君、Ampシュミレーターの使い方には気をつけよう。
自分だけの音を探すんだ!)
ボクが良く聴いてるのは2001年11月に行われた“伝説”の野外コンサートのLive
CD。
正真正銘3人での勝負。
SEKがjimi hendrixのヘイジョーのフレーズをやったり、
ベース、ドラムsoloコーナーのセカンドラインリズムでのインプロビゼイション(アドリブ)。
何気にこういう「どこにでもあるRock的展開」というのが
タイ(のBAND)ではなかなか見られないんですね。
ボクの好きなブリティシュブルースRockの
テイストが溢れているのも嬉しい。
2002年暮れ、
SEKのイギリス留学によってLoSoは活動停止状態になりました。
しかしSEKは2003年春にはソロアルバムも発売し、
その暮れにはお忍び的な ソロLIVE も披露。
つい先日のpataya music fesにも参加。
そして極め付けが今回のスーパースター・トンチャイとのコラボ。
どうやら留学も終了した気配?なので、
これから大いに活躍してくれるでしょう。
個人的にはSEKの音楽的成長に大いに期待したいです。
もし新しくBANDを組むなら、他のメンバーを"従える"のではなく、
たとえば自分よりも年上の、
"凄腕"のファラン(白人)をリズムセクション(ドラム&ベース)に入れてもいいと思います。
気持ちも新たに、SEK自身が自分だけのRockに挑んでいく形がいい。
SEKは モダンドッグ のPODと同様、タイRock Artistの中核となって、
T-POPを大いに引っ張っていってもらいたい、
そう強く思っています。
ちなみに、名曲♪アライゴヨームは既にボクのレパートリーに加わっております。
(サビだけ完璧)
(15/MAY/2004 記)
LoSoはタイの女の子からみたら
ダサい部類に入る、というのを聞いたことがあります。
(そりゃBakery聞いてるお嬢様からみたらそうかもしれない)
仮に、そういうダサさ基準で図るなら、
こちら、 TAXI の方がはるかに上手(うわて)でしょう。
TAXIのデビューは2001年。
現在までにオリジナルアルバム3枚、BEST1枚を発表。
スキンヘッドにヒゲのVo&Gのゴップ(36歳!)は
イケメン重視のタイロックにおいては貴重な?存在。
しかし、彼の力強くハスキーな歌声はTAXIの最重要ファクター、
タイRock界でも突出した存在感を放ってます。
一般的にタイのシンガーは声に特徴・個性のある人が少ないように思います。
小奇麗に歌おうとする傾向がある。
(一説には歌い方を強制させられているとも?)
ボクはTAXIとは何故か縁があって、二度ステージを見てます。
RAHATはいつもプロフェッショナリズム全開のパフォーマンス。
サービス精神満点の彼の奮闘は時に感心させられるものがあります。
ドラムのオー(33)と、ベースのエーク(30)は
どうやらRed Hot Chilli Peppersがフェイバリットのよう。
コンサートでもcoverを1曲やりました(カリフォルニケイションの曲)。
特にベースはstageアクションまで本家fleaのクローンの様。
ちょっとやり過ぎの感も。
しかし、どうでしょう? 他の2人はそんなにレッチリ通ではないと見ますが。
大体、TAXIとレッチリ、かなり離れてると思います(苦笑
最新アルバムのプロモで、広い大地をオープンカーで走るなんて、
これまたご本家そのまんまのシーンが出てきたり……
このへんの"こだわりの無さ"がタイなんでしょうね。
チャゲアスの飛鳥似のGuitar・ペェム(37)は毎回ギターが変わってる。
昨年暮れに見た時は黒いレスポール、
4月のliveではテレキャス(恐らくfenderカスタムshop製)、
プロモなどみると2pick upのカスタムストラトを使ってたりする。
ギターオタクかもしれないですね。
時々モジュレーション系のウネウネサウンドを使いますが、
イマイチBANDアレンジ的にフィットしていないような気が。
でも研究熱心なのは良いこと。
彼のPLAYは特別派手なものじゃなく、しっかりと歌をサポートするスタイルで好感が持てます。
3rd album FULL OPTION (2003)
昨年のT-POPを代表するヒット曲、
♪Khid Thung Chan Mai Wee-laa Thii Ther... で特大ブレイクしたTAXI。
にもかかわらず、イマイチ評価が上がってない気が……
気のせいですかね?
ともあれ、手抜き無しで男臭さ全開のステージ、
ハードでありながら歌の良さも忘れない、浪花節Rocker、TAXI。
今日もタイの何処かで歌ってるんだと思います。
(20/MAY/2004 記)
Taxi 4th album「2548」(2004)
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