T-POPリポート

# 1 ヨーキーを発見。そしてBakery Musicを意識する
# 2 モダンなmoderndog ベタなT-BONE
# 3 フィリピンという音楽的キーワードについて
# 4 新種キワモノ系変態BAND? パラドックス
# 5 タイ音楽界に新風を吹き込んだレコード会社 Bakery Music
# 6 日本には居ないエンターティナーとして存在する怪物 トンチャイ・マッキンタイ










# 1  ヨーキーを発見、そしてBakery Musicを意識する

バンコク在住の音楽ライターの方とお近づきになれ、
山ほど音楽カセットを頂戴しました。
これでタイMUSICシーンを一気に俯瞰することが出来る、
すばらしいチャンス。
ちなみにカセットテープ(CT)はここタイではバリバリ現役のメディア、
新譜でも250円くらいで購入可能。
数をこなそうと思ったらタイではカセットが便利です。
 
では、そのカセット聴いて気になったアーティストを列記することに。
最大の発見は、
YOKEE PLAYBOY(ヨーキープレイボーイ)。
こういうコード感やグルーブのBANDを (日本ではボクは)
SUGAR BABE(山下達郎が1975に在籍したBAND)チルドレンと呼んでいるのですが、
果たして彼らヨーキーのお手本となったバンドが何なのか、
非常に興味深いです。
案外日本のピチカートファイブあたりだったりするかも。
<*その後、YOKEE所属のBakeryとピチカート小西康陽のコラボを確認>

Soulフレーバーの入ったメジャー7thを多用したギターカッティング、
ボクが個人的に一番聞いてるタイプの音楽ですが、
日本でもコノテのBANDが市民権を得たのは
90年代も半ば過ぎてからのように思います。
居ましたね、タイにも。

こういう人たちは普通のPUBでやってるのでしょうか?
ちょっと違うような気がします、ハイソなDISCOとかそんな場所のような。
こんな音楽、普通のタイ人、 反応できないと思います。
単に踊るだけなら対応できると思いますけど。

ヨーキー、もしくはこのタイプのBAND、 絶対見に行きたいですね!
じつはコノテの音楽、すごく生演奏、難しい。
特にリズム隊(Bass&Drums)が。
基本的にベースになっているのは、
BLACK MUSICですから、技術的にも高いものを要求されます。
(一方、いわゆるROCKはこの世で一番技術的に簡単な音楽)

YOKEE PLAYBOY、
日本風にはめ込めば、キリンジ? 
いや、クレイジーケンBANDでしょうか。
メジャーどころだと、ケミストリーとか平井賢?
ボクは絶対YOKEEの連中は日本を手本にしてると思っていますが、果たして……

次に、アルバムのバリエーションの大事さ、という言葉を
思い出させてくれる点で、
BIG ASS(ビッグアッス)。

このバンド、何でもやってますね。
アルバムを通して飽きさせない。
「今ちまたであるもの全部入れてみました」的な、五目御飯バラエティ度で二重丸。
ラップあり、ハードコアあり、
でもタイ的なスローバラードも忘れず。
ある局面ではOFF SPRINGだったり、リンプだったり、
目指すところは話題のリンキンパーク辺りなんでしょうか……
BIG ASSを聞いてると、
タイの若いMUSICIAN、特にプロを目指すPLAYERたちの
平均像も何となく見えてくる気がします。
*追記 BIG ASSはこの後、2004年に大手グラミーに移籍、ビッグヒットを飛ばしました。
BIG ASS・2004年7月発売・最新譜seven

余談ですが、 これもタイのBANDが弱い点として、
バリエーション、あるいはアルバムコンセプトがあげられると思います、
それはあの(現在タイROCK最高峰の)SILLY FOOLSでさえ。
第1回報告はこの辺で。


# 2 モダンなmoderndog、ベタなT-BONE

今回頂戴したCT群の中でも、
一刻も早くチェックしておきたかったBANDがモダンドッグ
最初に得た感触は、
「BANDサウンドでありながら、明らかに他とは一線を画すオリジナリティ」
でした。
moderndog/Voのポット
タイのバンドにはアルバムコンセプトがない、なんて前回記したばかりでしたが
このモダンドッグにはそれはあてはまらないかも。
テクニック的なものでなく、
音楽的IQが高いBANDのように思います。
*その後VoのPODはタイの東大と言われるチュラ大出身であることが判明
タイ人には珍しく本とか読んでるのかもしれない(苦笑)。
*チュラ大生ですから当然です
でもコレ、イギリスですね、いまどきのUKカラー。
レイディオヘッドみたいな匂いもしますし……。
(2ndアルバム/Cafe)1曲目の♪Not So Cuteはグルーブ感もばっちりで好きな曲、
like プライマルスクリーム!

moderndogの次に聞いたのが……
音楽的IQが高いものいいけど、やっぱりここはタイ。
もっとベタに聞いてみたい、 そんなわけでT-BONE

スカという特殊性も手伝って、タイの中では異彩を放ちますね。
でも間違いなくタイ、イギリスじゃなくタイ。
そこがいいんでしょう。

こういうリズムの立ち具合は、サキソフォンで聞いてる気がします。
個人的に思い出したのは、
プーケットタウンのCOWBOYって大型PUBのハコバン(常駐のBAND)のこと。
ルーティンなんだけど毎晩結構熱いステージやってまして。
バンマスがDONってヤツで、 東京スカパラダイスオーケストラのFANなんです。
スカってのは、タイのトラディショナルな音と通じるものがあるように思いますね。
根っこにあるものが同じというか。
タイ人が親しみやすい感触を持っているように思います。

実はここまで書いて思ったのはフィリピン、というキーワードなんですよ。
アジアPOP MUSICにおけるフィリピンおよびフィリピン人の存在……
次回、ちょっと書いてみようと思います。
もちろんタイBANDチェックも 忘れませんよ。



# 3 フィリピンという音楽的キーワードについて

最初にバンコクの呑み屋でのお話。
マッキントッシュ好きのNサンが連れて行ってくれたNANAのBAR。
ここで3人組で踊りながら、
シュープリームス(ダイアナロスが居たガールグループ)歌ってたりするの、
実はタイではなくフィリピンの女の子。
タイ人とは明らかにリズム感が違う。16ビート、きっちり切ってる。
日本人も意識しないで16切れるようになったの、安室ナミエが芽を出して、
ウタダヒカルがモンスターヒット出してからのように思います。
だから、日本だってつい最近の話。
「ああフィリピンってちょっと違んだなあ」
そんなことを思いながら、
その店でボク、リクエスト用紙に、
キャロルキングとバートバカラックって書いて出したんですね。
曲名じゃなくてソングライター名ですね。
そしたらちゃんとやってくれましたよ、
「So Far Away」と ディオンヌ・ワーイックの「小さな願い」、
そういうの純粋タイの店だったら出来ないと思うんですよね。
というか、知らないでしょう。バカラックなんて。
(ちなみにCキング、Bバカラックともアメリカンポップスシーンを代表する作曲者、
名前は知らなくとも彼らの曲は誰でも聞いたことがあります。
二人の曲を合わせればビルボードNO1ソングが二桁になります)。
そんなわけでアジアにおけるフィリピンの音楽的裾野の広さを
お酒呑みながらも確認した次第なのです。

たとえば
日本のロック、という観点から見ても
それこそグループサウンズ時代の洋楽模倣時代から
はっぴいえんどによるいわゆる「日本語ロック誕生」
への切り替わる時代においても 、
ずっと底辺?いや町場の音楽シーンを支えてきたと言われるフィリピンBANDの存在。
東京在住のバンド仲間に聞いても、
当時、単純に彼らは上手かったみたいです。
(ただオリジナリティという点では?マーク)
ラテンの血も手伝ってか、
生まれつきフィリピーノはリズム感がイイのかな。
いわばアジアMUSICシーンの影の功労者、
アジアMUSICの根底には
フィリピン出稼ぎBANDたちが蒔いた種が息づいているのかも。

こうなるとマニラまで出張しなきゃいけないですかね(笑
でも、フィリピンのオリジナルBANDって聞かないですね。
アースWIND&FIREなんてバリバリやってそうですよねえ、マニラなんか。
フィリピン音楽シーンに詳しい方、
是非ご連絡ください。



# 4 曰く、新種キワモノ系変態BAND? パラドックス

タイ在住音楽ライター某氏、一押しのバンド、Paradox
ファーストアルバムSUMMERを聞いた第一印象は、
「もっとハチャメチャにやって欲しい」

アルバム1曲目のような不安定度を
もっとちりばめて欲しいというのが本音でしょうか。
1曲目「可愛いブンちゃん」から
2曲目「LOVE」へのつなぎはとてもイイ。
この繋がりをもっともっと追求して欲しいのです。
緩急っていうんでしょうか。
多くの曲が、タイ定番の 循環コードラブソングではちょっと……
いっそうの成長をのぞむためにも
楽曲作りに関しては是非がんばってもらいたいと思います。

そんなことを思いながら出発した旅先のチャンタブリーで、
彼ら初のLIVEアルバム、
「PARADOXサーカス」のCTを購入しました。
(2本組で80Bは安かったので)。 
このLIVE盤は彼らの実力を知るには 格好の材料になりました。
技術的に特別難しいことはやってない彼らですが、
LIVEを聞く限り、スタジオ盤よりもずっとパワフル。
BANDとして弾き込んだ跡もあり、 実はかなり真面目な人たちではないのでしょうか?
<*一説によると弁護士や教師の集まりとも>

しかし、タイ人、歌うの好きですね。
TAXIのliveを観た時もそうでしたが、
このPARADOXのあの能天気な楽曲群でも
会場の女の子たち、歌ってました。
いいんじゃないでしょうか。
しかし逆説的に言えば「歌えない」歌はリリースされにくい?
カラオケの功罪は、世界的傾向?。

このPARADOXサーカス、VCD、DVDでもリリースされているので、
是非映像で再確認してみたいと思います。

追記*パラドックスLIVEレポート
左上から時計回りにYOKEE、moderndog、Bakery's Sound Revisited、PARADOXの各CT




# 5 タイ音楽界に新風を吹き込んだレコード会社、Bakery Music

Bakery's Sound Revisited ・Collection of Rare & Unreleased

これ2003年の夏にリリースされたCD/CTのタイトルです。
何たって、 レアだの、アンリリースドなんて言葉が
タイの音楽で出てくること自体に
ボクは大いなる驚きを感じてしまった訳で(by 北の国から)、
加えてジャケットがアナログLPをチェックする金髪タイ人?の後姿。
うーん、コレクターしてるわ。
(こんなことしてるタイ人、見たことないです。果たして何人くらいいるんでしょう?

このジャケットだけみても タイの音楽の成熟度が分かる、
といいたいところですが、
一般的な先進国が数年あるいは数十年かかってくぐるPOPミュージックの変遷を
おもっきりすっ飛ばした突然変異的な場所に、
ベーカリーというのは存在するのではないのか?

それを引っ張っているのはムーブメントだのトレンドなどではなく
明らかに特定の人の“意識”、だと思うのです。
それが、ボーイ・コシヤボン?なる人物なのか
SUKIE(スキー)なのか、
Mr.Zことゾムキアットなのか、とても興味があります。

さて、チャンタブリーで購入してきたそんなタイトルのCT、
肝心の中身のほうは残念ながら期待はずれ。
印象に残ったのは、 Groove ridersなるBANDの「カラー」という曲。
FUNKです。
作編曲はモダンドッグとスキー。

やっぱりタイ音楽を語る上にベーカリーは
避けては通れぬ、踏み絵?のような存在でしょうか。

今後はこのBakeryを中心にタイ音楽の旅を楽しむことになるかも。
まさにオタクの権化ですね、Bakery



# 6 日本には居ないエンターティナーとして存在する怪物……トンチャイ・マッキンタイ

「国民的歌手」
日本では死語と化し、
恐らく今後、現れることがないであろうその称号に相応しい男がタイに居る。
それがトンチャイ・マッキンタイ(45)。ニックネームはバード

ボクがチェックしたのは、
3人の女性シンガーと共演した一昨年のコンサートVCD。

感心する……というLEVELを通り越して、感動してしまった。
舞台のイメージは劇団四季か宝塚。
豪華絢爛なステージを駆け巡り、歌うトンチャイ。
合間のおしゃべりも楽しい。
内容は分からないけど話しっぷりは多分おすぎとピーコ(苦笑)。
トンチャイのステージはタイ・エンターテイメントの最高峰、と言ってよい。

デビューして20年というトンチャイ、
これだけのダイナミズムを備えた歌手は、現在の日本には居ない。
歌って踊れて、芝居も出来て(舞台や映画にも出演)、
なにより観客を喜ばせる術を知っている。
だから、やっかみも含めて日本人にも言いたい。
「トンチャイは凄いぞ」と。
(ちなみにトンチャイのコンサートに来る日本人FANももちろん居ます。
「バード」なんてカタカナのプラカード出してました)
超ヒットアルバム「チュット・ラップ・ケープ」

あえて日本人で探せばジュリーになるんでしょうが……
思えばボクは高校生の頃から、
ジュリーがこのまま歌い続けてくれれば、
それこそ日本のミックジャガーに、デビッドボウイになれる、と信じていました、が……
顔の大きさや体重がトンチャイの2倍になっちゃった。
我々日本人としては少年隊のヒガシに頑張ってもらうことにしましょう!

とにかく、タイを、
いやアジアを代表するエンターティナー、 トンチャイ・メッキンタイ。
個人的にはもっと国外でも評価されても良いのではないか? 
そう思っていますが。

皆様も、タイに来る機会があれば
是非一度その目でお確かめください。
(ちなみにチケット取るのは至難の業だそうです、ごめんなさい)。

お勧めCDは
モーラムのチンタラーら女性シンガー3人と共演した「チュット・ラップ・ケープ」、
売上400万枚!?という、 タイ音楽史に残るモンスターヒットアルバム、です。

タイのPOPミュージックはサッカー同様、東南アジア最強ですよ!


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