リオパラリンピック 国別メダルランキング、
1位は中国で金107、銀81、銅51、合計239という圧倒的な獲得数。

日本は、
金0、銀10、銅14、合計24で64位。

タイは
金6、銀6、銅6、合計18で23位


日本は前回のロンドン大会の金5を含む計16個を上回ったが今大会の金メダルはゼロのため順位は大幅に下げた。
1964年東京大会に参加して以来、夏季パラリンピック史上初めての事態。

リオパラリンピック - 国別メダルランキング:朝日新聞デジタル
日本、夏季パラ初の金ゼロ 世界の選手増、レベルも向上:朝日新聞デジタル

 18日に閉幕したリオデジャネイロ・パラリンピックで日本勢は金メダルがゼロに終わった。前回ロンドン大会を上回る24個のメダルを獲得したが、「金ゼロ」は夏季大会では初めて。障害者スポーツ界で何が起きているのか。

 競泳男子の木村敬一(26)が目に涙をにじませた。金メダルが期待されていた14日の100メートルバタフライ(視覚障害)決勝。0秒19差で2位になり、「負けた以上、悔いが残らないことはない。死ぬまでモヤモヤする」と絞り出した。17日にあった陸上男子走り幅跳び(切断など)では、山本篤(34)が8センチ差の2位に終わった。

 日本は、24個のメダルを獲得した。前回のロンドン大会の金5を含む計16個を上回ったが、今大会の金メダルはゼロ。1964年東京大会に参加して以来、夏季パラリンピック史上初めての事態となった。
 世界のレベルが上がっている。今大会は約200の世界新記録が生まれ、陸上男子1500メートル(視覚障害)ではリオ五輪の優勝タイムを4人が上回った。競泳の峰村史世監督は「(2004年)アテネ大会の銅メダルタイムがリオでの決勝進出タイムだった」。特に苦しんだのは、88年ソウル大会からアテネ大会まで必ず獲得していたメダルを再び逃した女子競泳陣。期待の若手を中心に派遣したものの、多くが予選落ちした。
 パラリンピックに出場する選手の数は増える傾向にあり、リオには159の国・地域から史上最大規模の約4300人が参加。選手数が増えたことで、競うレベルも高くなる。4年後の東京大会の開催を見据え、日本は強化に使える予算を増やし、合宿や遠征を重ねてきたが、陸上の三井利仁ヘッドコーチは「障害に合わせた生理学的な強化方法などを、もっと突き詰めなければならない」と口にした。

■金メダル107個、強い中国
 かつてリハビリの一環だった障害者スポーツは、近年、競技化が進んでいる。それに伴って、国によるメダル争いも白熱してきた。特に金メダル107個で4大会連続で獲得数1位になった中国の強さに、世界は改めて驚かされた。
 中国の障害者の数は、AP通信によると、8500万人とも言われ、その中から選りすぐった才能を国家的に育成している。18日にあった女子車いすマラソンでは、無名の中国人選手が優勝するなど、新鋭が彗星(すいせい)のように現れる。9個の金メダルを獲得した車いすフェンシングの凡虹監督は「練習施設、選手の食事や住まいの費用は政府が出す」。就労が難しい障害者が、スポーツで生活を切り開く道を用意している。
 金メダル41個で、前回より獲得ランクを一つ上げた3位のウクライナも国全体で強化する。タマラ・イシチェンコ競泳チームリーダーは「やりたい人に機会を与える十分な予算がある」。1996年から力を入れ始め、障害児向けの州立スポーツスクールが全国に27カ所あるという。トップのパラ選手は、競技に専念するプロに近い存在になっている。

 金メダルの獲得数は中国を筆頭に、英国、ウクライナ、米国、豪州の上位5カ国だけで計274個。全種目の5割以上を占める。一部メディアは、障害の種類や程度によって競う種目を振り分けるクラス分けで不正をする国があるのでは、と指摘する。国際パラリンピック委員会(IPC)もクラス分けの不正について理事会で話し合ったことを認めた。開幕前、ロシアの国ぐるみのドーピングで揺れた大会は公平性への新たな疑問が出てきた。

■強化と裾野拡大、両立が課題
 20年までに金メダル獲得数を7位に。日本障がい者スポーツ協会は、目標のメダル獲得数を設定し、30年には5位を目指している。

 これまでは、障害者やその家族が手弁当でできる範囲でパラリンピックを目指す傾向が強かった。しかし、14年度にパラ選手の所管が厚生労働省から文部科学省になり、育成が一本化された。五輪選手らのためのナショナルトレーニングセンターを、パラ選手は以前よりも利用できるようになった。リオ大会の結果を受け、日本パラリンピック委員会の鳥原光憲会長は「金、銀、銅をバランス良く取れるように強化したい」という。

 一方、パラリンピアンの育成ばかりに注目が集まると、一般の障害者のスポーツ振興にお金が回らなくなるという懸念もある。日本の障害者スポーツの理念の一つが、全ての障害者がスポーツを享受できること。しかし、気軽にスポーツを楽しめる環境は少ない。笹川スポーツ財団の調査によると、週1回以上スポーツをする成人の障害者は19・2%。内閣府が調査した成人全体の40・5%の半分以下だった。同財団の渋谷茂樹主任研究員は「参加者を増やすには、障害者が日常的にスポーツをできる環境を整える必要がある」。

 強化と裾野の広がり。その二つを両立させる道は簡単ではない。国際パラリンピック委員会(IPC)のフィリップ・クレーブン会長はいう。「金メダルを取るのが重要なことではない。運動して楽しむことで自信を取り戻し、仕事に就くようになることがある。だれでも共生できる社会を作ることこそが、重要だ」(後藤太輔、伊木緑、中小路徹)