メーホンソーン県パイ(パーイ)は来るたびに変化し、開発が進む町。その流れは今も止まっていない。
何よりも驚いたのは、更に勢いを増したタイ人観光客の多さ。今回Pai International Film & Animation Festival 2008というイベントが開催中であるにせよ、このタイ人の多さは今のパイを最も象徴するキーワードであるかと。
チェンマイからは130キロあまり。その道はパーイに近づくほど整備されていて、気持ちが良い。パイの盆地に下りると町の入り口、パイ川にかかる第2次世界大戦鉄橋(メモリアルブリッジ)はすっかり化粧直しが終了し、案内の看板も立てられ、写真大好きタイ人の格好の記念写真ポイントになっている。
そのたもとにはチェンマイで有名なコーヒーチェーンWaaWeeCoffeeと、洒落たデザインの真新しい野外レストランが2008年に完成。以前のパイを知っているものにはいきなり「ここはどこ?」と思わせる変化である。
その先、小高い丘の上にあるCofffee in Loveというドライブイン喫茶の周辺も、リゾートなどが2008年に相次いで完成。ここはパイ盆地が一望できる絶景ポイントでもあり、もうパイの町まで数キロ、目と鼻の先、という場所であるにも関わらず、かなりの車が駐車して、記念撮影している。これも全部タイ人。多分この場所などはタイの全国紙(誌)で紹介されているに違いない。 

パイの町中に入れば、相変わらず白人、それもちょっと羽目を外したバックパッカーの姿が見かけられるが、もう以前のような「白人に占領された町」のイメージはない。
逆に日本人らアジア人の姿が極めて少ない。そういえばここ数年急激に幅を利かせていた韓国人の姿がまったくない、自国のウォンがあれだけ暴落したら当然の状況とはいえ、真の国際競争力とは何なのか、しみじみと考えさせられる。

イベント開催中とはいえ宿には困らない。町の中心はゲストハウス、郊外はコテージタイプというのがパイの宿スタイル。
ただ値段はタイの水準から考えれば決して安くはない。コテージは殆どがトイレとシャワーが中について500バーツ。町中のGHも同様で設備が古くなったり共同トイレとなれば400、300と値段は下がっていく。
筆者の泊まったTAYAI’S G.H.(053−699579)も基本は500バーツで小さい部屋が特別に300バーツという値段設定だった。いわゆるバックパッカーのドミトリー宿は発見できなかった。そういう意味では沈没にはあまり向いていない場所かもしれない。そういう「まったり系、いかにも××やってます」みたいな白人は確かにもう居ない。安宿ばかりを書いたが数千バーツというリゾートホテルもむろん多種用意されているのでご心配なく。12月はハイシーズンなのでオフになればもっとリーズナブルな値段になるであろう。
いずれにせよ、圧倒的な供給過剰であることは間違いないので、飛び込みで訪れても宿に困ることはまず無い。ただ土日には確実に観光客が増えるであろうから、その場合留意のこと。

タイ人がこれだけ北に押し寄せるのはむろん観光局(TAT)によるフォローも大きいだろうが、生活が豊かになるにつれてタイ人の趣味やレジャーの多様化が進んでいることがあるだろう。どうやらこのパイを舞台にした映画も公開されたことが影響しているようで若い観光客画目立つ。また面白いことに1眼レフのデジカメをぶら下げたタイ人が異様に目立つ。そういう一部の写真愛好家の集う場所になっているのだろう。

車のナンバーを見ると、圧倒的にバンコクからの車が多い(四駆タイプなど)。バイクはチェンマイナンバー。バンコクからは家族や気の知れた仲間と。チェンマイからはリュックを背負って恋人や友人と。そんなタイ人の行楽スタイルが容易に想像できる。
チェンマイのデパートなどでもアウトドア商品が大展開されているが、ここパイなどはそのアウトドアの本場として注目されているのだろう。静かに流れるパイ川にはテントが並び、都会の喧騒と離れた山と川の自然の中で、雪こそ降らないものの、ここではタイとは信じられないほどの“寒さ”が体験できる。
こちらが見ていてもタイ人たちが寒さを楽しんでいる様子が分かる。Tシャツにマフラーなど日本では考えられないファッションだが。
メーホーンソンへ抜けるためのパーイの町を文字通りショーットカットするバイパスも完成したが、これほどの充実振りをみせるパイに立ち寄らない観光客は少なく、バイパスを走る車は殆ど見えない。

チェンマイからパイへの道路整備は今も続いているし、パイが今後も大きく変化、発展していくことは間違いない。
お気に召すかどうかはそれぞれの志向にもよると想うが、パイは一度は訪れる価値のある場所、そしてまたその変化を見に訪れて欲しいところでもある。今回のフェスティバルが定着すると面白くなるかも。

なお12月のパイの冷え込みは半端ではありません。セーターや上着、防寒着のご用意を忘れず。