文句なく彼らの最高傑作
body_saveGMMグラミーに移籍してメンバーも4人になって発表した前作Believeが2年半前。
その後の長い長い殺人的ツアースケジュールを乗り越え、Vo.トゥーンはM-150の広告メンバーにも選ばれたり、一躍タイPOP-MUSICのトップシーンに躍り出たボディスラムが放つ新作。
当時ボクは彼らの快進撃を、タイ産業ロックの夜明け、と揶揄したが、果たして2年経過して彼らはどう成長したのか? 興味津々の全10曲43分(2007年9月発売)。
実によく練られたアルバムだなあ、と。
それにお金も掛かってます。それは素直に認めたいとw
エンジニア、ミキサーとしてクレジットされているのはLiam Laurenceなる人物。
実は今回のアルバムを通して聞いたとき最初に思い出したのが、3年前に出たZealのTripというアルバム。このアルバムのプロデュース&ミックスは、simon henderson。シリーフールズやToeの新バンドHUNGMANも担当するタイでは知る人ぞ知るファランのエンジニア。タイではやはり外人エンジニアが音作りすると出来が段違いに良くなりますね。
このアルバムでもLiamの実力でしょう、この「音質の良さ」が格段光ります。

個人的なベストトラックはM-2とM7。
いずれもアレンジ面での濃密さが群を抜きます。ギターではなくそれぞれピアノ、エレピのサウンドを上手く取り入れ、豊かな表現力で印象的なナンバーに。
M-2.Aok hukはピアノをベースにしたアレンジに、ギターのハマリングオン・プリンクオフ奏法(ライトハンド? あるいはトランストレモロ使用?)をからませ、徐々に盛り上がっていくダイナミックな構成が出色の出来。このギターをボディスラムのギタリストがどこまで情感高く弾きこなせる? という素直な疑問は浮かびますw。
M-7.Kon mee tungも末広がりのスケールを持った良い曲。
この曲でアルバムを締めれば次への期待も感じられて、よりいっそうに良かったと想うのですが、実際のラスト曲M-10.Korb kun narm tar コープクン・ナムターも「ありがとう、涙」ってフレーズで、この終止形も悪くない。

音楽的完成度においてはおそらく今年のT-POP屈指の出来栄えを魅せた本作。
でも心配な点は2つあります。
これだけの音楽世界、高い技術を要するアレンジ世界を、若い3人で再現できるか? 早い話、クリック(同期)だらけのパッケージSHOWになってしまうなら興醒め。また、M-7でのベースのチョッパー奏法など現状のメンバーがどれだけ再現できるのか?
ボクは彼らのステージ何度か見てるので、はっきりいって心配。ジャニーズみたいに弾いてるふりだけ、なんてことはないと想いますがw

あとは、Vo.トゥーンの歌唱法。
彼のヴォーカルはどんな曲を歌っても 最初から泣いているような歌唱法で、ボクは勝手に自己陶酔系ヴォーカルと呼んでますが、クラッシュのヴォーカルほど醜く無いとはいえ、これをクセにすると間違いなく 歌の表現力の幅を狭めると感じています。もっとも、これはもう後戻りはできないことかもしれないし、認知されるまで歌うべきなのかな? 個人的にボディスラムの音楽にのめりこめない大きなネックはトゥーン君の歌なのですw

あとジャケですが、タイのCD音楽ジャケの進歩の無さには泣けてきます。このアルバムも表と裏、逆にすべきです。もうメンバーをズラッと並べて撮るジャケットは卒業して欲しい! その卒業するだけ価値を持ったアルバムですよ。
なお、M-5.Kae lhub tarで女性ヴォーカル(パナッダー)、M-9.Naliga taiでサックス(Koh Mr.SAXMAN)がゲスト参加。
タイポップの現在進行形、完成度の高さを知るに大いにオススメできる1枚です。