tikshiro100流浪の?音楽芸人ティックシローがアサニーワサン率いるMORE MUSICから発表した摩訶不思議なアルバム。ウケ狙いのコミックソングばかりかと想えば、その奥に潜む確信犯的音楽スパイスに驚きも。
幾百のタイバラードとは一線を画す(ポール・ウィリアムスばり出色の出来!)珠玉のバラードM-3 Rak Mai Yoom Pleianpleengや、俺はボーラーンマン!(古風な男)と叫ぶM-7の表題曲など、全11曲43分(05年12月発売)。

2004年、バンコクに住んでいたときに偶然エンポリアムでTik Shiroのステージを見ました。白いスーツ姿で、缶などいろんなモノを叩いて打楽器にしてしまうドラム・イベントでした。MCや歌は無し。「あー歌もうやってないのかなあ」、そんなふうに残念に想った記憶がありました。
tikshiroCTボクの持っていた彼の音源は左のカセットのみ。でもこれがなかなかの作品。ブルーアイドソウル(白人の歌うリズム&ブルース)的な洗練度を持った曲も多く、当時からセルフプロデュースもしていて「この人何者?」と想わせる濃密な内容でした。

それだけに今回の「(音楽的に)ハズれのない良心設計レーベル」MORE MUSICからの新譜はうれしいですね。先の7Cコンサートの「モアミュージック祭り(勝手に呼んでます)」でもしっかりトリを努め、お客さんを煙に巻いてました(笑)。

このボーラーンマン、殆どの曲の作詞・作曲を自身で
得意のドラム・パーカッションなど打楽器類は当然、キーボード、コンピュータープログラミングまで自らやってます。
(ギターソロなどを除いて)100パーセントTik Shiro自身が構築する音。
ベースのプログラミングまでというのはリズム構成全体を掴んでいる証拠。(ドラムパターンの勉強はアレンジその他音楽のしくみを把握するのに最適です)。
この辺りからも彼の持つ音楽知識の深さが伝わってきます。

ベタベタで(聞き飽きた感さえある)タイPOPソングもさらりと流せるのが不思議、それはモーラムやルークトゥンの「楽しさに徹した音作り、曲作り」に相通ずるものがあるのでは。安心して笑ってられるんですね(笑)。モーラムやルークトゥンに理屈はヤボでしょう?

このTik Shiro、T-POP的には「番外編」に属する位置かもしれませんが、こういう稀有な才能はタイでは絶対必要な要素。

ちなみに写真では分かりませんが、CDジャケの右足(足元)に注目。それ見て「憎めない奴」と思えた方は、このCD買えます。