セカンドチャンス帰国途中iPod-Shuffleで聞いて、今年最後の収穫、と直感。
ベーカリーミュージックより2004年デビュー。タイでは珍しいFunk色を持ったPop Rock Bandとして順調にその世界を広げている実力派Crescendoの2ndオリジナルAL。全14曲58分。
このバンドのグルーヴの核はベーシストNORのアタック感・タイム感の鋭さに拠るところが大きいかと。彼はタイ人ベーシストではボクの数少ない注目のMusician。
このCrescendoを聴いているとベーカリーに存在した(そのNORも在籍した)pauseという有能なバンド、不幸な顛末に見舞われた彼らの「音楽に賭ける意志」を継いでいるような気がしてきます。想うに今まで彼らが聞いてきた、浴びてきた音楽の土壌の違いが、いまの数多くある他のT-POP/ROCKのバンドとの違いに表れているのでは、と。
はたして、その違いとは?
たとえばM-4のギターワウsoundとサビのコーラス。こういう「フツーのRock的アプローチ」がタイでは信じられないほど少ない。イムプロヴィゼイション(アドリヴ)の隙間を残した楽器の応酬。
たとえばバラード曲であるM-6に有る「ソウル」。ごまんとあるT-POPバラードとは明らかに一線を画すその「ソウルな味」は、にじみ出てこそ意味があるもの。借り物でない自分たちのマインドを出すには……練習しかないでしょう。ギターの音色や細やかなピッキング、そして絶妙な「間合い」。「間合い」は大事ですよ、音楽には。それはリズム感、グルーヴ感とも結びつくもの。近頃つくづく想うのは、T-POPに一番欠けているのは「ソウル」なのかと。
たとえばM-8のイントロのブラス(管楽器)の使い方はT-POPでありがちなアレンジやフレージング、でもこれがM-10でのFunkyな曲調に乗っかってくるダイナミックなブラス展開となるとT-POPフィールドではグッと少なくなる。音楽知ってないとできない感覚、この曲でのNORのベースソロは必聴です。
「流行れば殆どが右に習え」状態のT-POPにおいて、ひたすらGroovyなバンドサウンドを追及する稀有なバンドCrescendo。
少々心配なのが、CDでは音数の多いアレンジなので、ブラスやキーボードなどをLiveでフォローするのにクリックを多様する可能性があることと、あと本来のファンキーな持ち味を封印して「受け入れられやすい」凡庸なT-POP的選曲をLiveではやっていくのでは?という点(実際FATフェス5ではいささか消化不良でした)。
とはいえ、本領さえ発揮すれば、各楽器間の掛け合い等、相当スリリングなステージを展開してくれそうな、そういう期待感も十分にあるバンドでしょう。
今度は音楽ファンの多いアヌサワリーのサキソフォンのようなコンパクトなハコで見てみたい。

・以前書いた1st AL Crescendoアルバム評

・FATフェスティバル5でのCrescendoステージReport
Crescendo & Peach Band in 7C Concert